第164章

久世直哉は、目の前の少年を見据えた。気配はどこか擦り切れているのに、瞳だけは折れず、まっすぐで、決断の刃を宿している。

そのせいか、直哉の視線はわずかに揺れ、奥底で黒い苛立ちが燻った。

「玲央。俺の電話、盗み聞きする許可を出した覚えはない」

低く、冷えた声。

「出ていけ」

久世直哉は、誰の前に立っても、いつだって柔らかな微笑みを崩さない男だった。玉のように温和で、育ちの良さが滲む――そんな「公子然」とした顔を、当たり前のように纏っている。

家の者に対しても春風みたいに穏やかで、言葉は常に丁寧だった。

脚を折り、久世家の中で半ば「役立たず」と見なされるようになっても、彼は誰にでも...

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